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接着剤及びシーリング材の粘弾性測定

接着剤は、一般に、液相から固相への変化を利用して表面を接着します。温度変化によって相変化が起こるもの(ホットメルト接着剤)や、室温で溶剤が蒸発したり、空気中の湿度によって硬化したりするもの(コンタクト接着剤)があります。また、2つ以上の成分を混ぜたときの化学反応によって硬化する多成分接着剤や、放射線や熱などのエネルギー源を外部から照射することによって化学反応を起こして硬化する一液型接着剤もあります。(木材から得られる)ピッチ、ビチューメン、蜜ろう、(植物から得られる)スターチのように、自然界にも接着剤があります。

シーリング材は、含浸により表面を保護したり、小さな穴を塞いで気体や水の浸透を防ぐために使用できます。

測定対象となる代表的な接着剤及びシーリング材

ホットメルト

ホットメルトは様々な業界で数えきれないほど多く使用されています。自動車、エレクトロニクス、衛生/医療(薬剤パッチ、産着など)、梱包(箱や段ボールの封、接着フィルム、ラベルなど)、靴及び衣類(靴底用接着剤、コーティングなど)、家庭用品(ホットグルー用カートリッジ、接着フィルムなど)はその一例です。ホットメルト接着剤は、接着剤業界の中で最も規模の大きな分野の1つです。ホットメルトは、使いやすく比較的低コストであり、製造スループットを向上させて時間を節約できるため、コスト削減を図ることができます。さらに、ホットメルトには溶剤が全く含まれていないか、含まれていてもわずかなので、環境的な問題や関連する費用も発生しません。ホットメルトが他の接着剤と異なるのは、溶融状態で塗布し、すばやく冷却すると、室温で硬化し接着状態となることです。粘度が比較的高く短時間で硬化するため、多孔質材料の接着に理想的です。

ホットメルトの粘弾性測定

ホットメルト接着剤は比較的分子量(MW)の大きな熱可塑性ポリマーで、優れた剛性を備えています。ただし、高分子量のポリマー自体は一般に接着性(タック)が不十分なため、可塑剤、粘着付与剤、安定剤などの添加剤を配合して接着性能を高めます。ホットメルト接着剤は溶融状態で使用されます。ぬれと接着性を確実にするためには表面に滑らかに広がる必要があります。このため、ホットメルトの適切なパフォーマンスを保証するには、レオメータを使用して、温度の関数として粘度を測定することが重要です。さらに、強い接着を実現するには、時間が経過しても安定した状態が保たれることが必要です。ホットメルトの粘弾性特性を評価することによって、特定の用途に対する適性を判断したり、用途に応じて配合を調整したりできます。ホットメルトの粘弾性挙動を調べる最適な方法の1つは、一定の動的機械的条件で(つまり一定のひずみと周波数で)温度依存の振動試験を行うことです。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。 この測定は、自動車業界で通常使用される粘弾性測定の1つとなっています。

プラスチゾルペースト

PVCプラスチゾルペーストは、射出、コーティング、浸漬、鋳造、押出加工に使用されます。車体足回りのスプレーコーティングプラスチゾル、化学業界の腐食防止コーティング剤、建設業における床材などとして使用されるほか、人工皮革、保護衣、密封材の製造にも使用されます。通常、コーティングと成形は室温で行われます。その後に熱を加えると、プラスチゾルがゲル化及び硬化します。

プラスチゾルペーストの粘弾性測定

加工する場合、ゲル化し始める温度が重要な要素となります。プラスチゾルペーストの温度依存の増粘挙動を測定するには、一定の振幅と周波数で温度分散による振動試験を行うのが最適です。通常、処理温度は室温です。ただし、処理中に粒子の摩擦が発生するため、スプレーガンの使用時やブレード塗工などでは、温度が+30 °C以上になることが予想されます。また、粘度が最小になる温度が重要です。最小粘度が低すぎると、塗布したペーストが流れたり垂れたりします。メーカーは、特に夏場に処理前の材料を保管可能な上限温度を知る必要があります。ペーストの粘度と硬さが増すと、ゲル化開始温度に達します(通常+60 °C以上)。プラスチゾルペーストの硬さは、通常、+120 °C以上のオーブン温度で最大になります。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。

シリコン系シーリング材

何かを塞いで外部の影響から保護するというニーズは、ほとんど人類の歴史と同じぐらい古いものでしょう。新石器時代、人間は、高床式住居を雨風から守るために、草、ろう、泥など天然のシーリング材を使用して隙間を塞いでいました。18世紀にはパテが使用されるようになり、様々な合成シーリング材が生まれました。浴室などの内装取り付けに使用されるシリコン系やアクリル系のシーリング材は、ごく一般に普及しています。

シリコン系シーリング材の粘弾性測定

シリコン系シーリング材の粘弾性特性の重要な試験の1つは、チキソトロピー挙動の測定です。これは、容器から押し出された後の材料の回復状況を表します。いわゆるステップ試験または3インターバルのチキソトロピー試験を行い、加える力を変えていきます。小振幅振動から大振幅振動にし、小振幅振動に戻します。この振動試験により、材料の粘弾性挙動に関する情報が得られるので、サンプルの試験結果から粘性(損失弾性率G'')及び弾性(貯蔵弾性率G')特性を評価できます。振動状態における3インターバルのチキソトロピー試験から、使用後にサンプルがまだ流れている(G''>G'の状態)か、既に固体の状態(G'>G'')なのかについて、重要な情報が得られます。使用時及び使用後の挙動が期待通りかどうかによって、優れたシーリング材と不良なシーリング材を明確に区別できます。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。

UV硬化接着剤

紫外線を照射すると硬化する接着剤には、従来の方式で硬化する接着剤に比べ多くの利点があります。一般的にUV硬化接着剤は溶媒を全く含まず、硬化時間は短く多くの場合は1秒もかからないため、高速な処理を実現できます。また、外部からの加熱が不要なため、通常は材料に極めて小さい熱応力しか発生しません。

UV硬化接着剤の粘弾性測定

硬化後の材料の機械的特性を決める要因としては、反応剤の量とタイプ、UV光源の強度と波長、照射時間など、多くのものがあります。粘弾性測定を行うと、このような要因に関する多くの情報が得られます。UV硬化を観察する最善の方法は、一定の周波数とひずみ量で振動測定を行うことです。例えば、右の図は、紫外線照射の強度がUV硬化接着剤の硬化時間と最終的な剛性に与える影響を示します。

この測定には、UV硬化測定システム(下側からサンプルを照射できるUV光源と交換可能なガラスプレートを備えたペルチェ素子温度制御システム)を装備したレオメータが必要です。